こっくん道場

南の島から東大に来た僕が日々思うアレコレ

「AIとBIはいかに人間を変えるのか」でAIとBIの基本を学べ

最近、AI(人工知能)とBI(ベーシックインカム)の議論が世界中で巻き起こっているので関心を持たれている方は非常に多いかと思います。

しかしながら、「AIとBIに関する意見をそれぞれ10分間ずつで語ってください」と言われてすらすらと10分間語れる人の割合はそう高くないかと思います。

私自身もこの本を読むまでは、TVやビジネス雑誌とかで取り上げられているのをなんとなく見たことがある程度で10分間も色んな視点を挙げながら述べていくことは正直無理でした。

そんな私みたいにがっつり勉強はしたことがないけど関心はあるひとにはもってこいの入門書だったのでぜひ一度手に取ってみることをお勧めします。

重要なポイントを厳選して紹介!

AIとBIが両方機能し合って初めて我々の幸福につながる

AIかBIのどちらか一方が欠けてしまうと好ましくない事態になる、という考え方は注目すべきです。

【AIだけの場合】

著者はAIが発達することによって起こる問題について「資本家による社会の完全支配」と「消費が減ることによる経済の崩壊」を主な二点として挙げています。

前者:

AIが人間の知的労働要素を含む仕事を代替するようになると、クリエイティブ系・ホスピタリティ系・マネジメント系の仕事以外の残り8割~9割の人間の仕事は取って代わられることになります。

こうしてほとんどの人が生産活動に関与する必要が消失することで労働者の存在価値が急激に下がります。それによってそれまで資本家と労働者で均衡を保っていた資本主義経済のメカニズムが崩壊し、資本家だけが思い通りにモノを生産し価値づけをし賃金を決めるようになってしまいます。そして、最終的には資本家以外の人間は産業革命以前の「生きていくのがやっと」という生活水準にまで成り下がりかねないと述べています。

後者:

上記で述べたように、資本家の独占的な支配により消費の中心を担う中間層が消えるために経済全体の消費が減退し経済全体も衰退してしまうというリスクも考えられます。

【BIだけの場合】

BIの導入の障壁は主に「官僚の抵抗」と「働かざる者食うべからずという社会通念」があると本文で説明されています。

そして、おそらくこの障壁はAIがしっかりと社会に浸透してほとんどの生産活動を代替し大きな経済効果を生みだして初めて乗り越えることができる壁なのではないかなと個人的に考えます。

人間が働かずに誰にでも同じ額を与えられることへの違和感が消えない限りBIの導入は現実的でないでしょう。そういう意味で、AIというテクノロジーでいち早く後者の社会的通念を覆していくことが不可欠であると考えます。無論、行政側が自分らの裁量を小さくしたくないという意図から生じる行政の肥大化にまつわる話も根深い問題ではありますが、AIが本当に代わりに働いてくれるんだという社会的通念を確立さえできれば行政もさすがに動くのではないかと思っております。

要するに、日本ではAIなくしてBIは市民権を得ないのではないかと考えるのです。

AIとBIが結びついたら

ここからが大事なのですが、AIとBIの両方が機能することによって以上のような問題が解消されるのではないかという話です。

そのキーワードが「再分配」になります。AIが今後発達して今までよりも生産性が向上したからといってその生産物がしっかりと消費されなければ経済は活発化せず世の中も到底豊かにはなりえません。消費の主役を担ってくれている中間層をAIによって失わないようにするためには資本家に集まる方向性に向かうであろう富を適切に再分配していくことが不可欠なのです。

そして、その再分配の切り札ともいえるのがBIであり、これによりAIがこれまでと比べて圧倒的な生産物を生み出しそれを大衆が活発に消費し経済が活発になるという未来像が見えてはこないでしょうか。全然、フィクションでもなんでもなくて近い将来確実にやってくる、いや実現すべき未来ではないでしょうか。

他の気になった部分を箇条書きでコメントしていく

〇AIにはなくて人間にある能力として、厳密な論理性に縛られず経験則で効率的に判断を行う能力が挙げられていました。文中では「ヒューリスティックな判断」と述べられていましたが、このような論理で説明できないような推論・判断プロセスはかつて(第一・第二次AIブームにて)は人間の特権だったそうです。(関連ワード:シンボルクラウンディング問題、フレーム問題)

 

〇これが、第三次AIブームでいわゆるディープラーニングという特徴量の自律的学習が可能になって状況が一変しました。これによって情報の取捨選択ができるようになり、情報処理の際の障壁であったノイズによる制約が軽減され人間のヒューリスティックな判断を限りなく実現できると言います。正直、こう改めて聞くとAIすごいなと思ってしまう自分がいました。

 

〇「今後のITの発展の最大のボトルネックは電力・エネルギーの制約である」という考えは今まで全く持ったことがないものでした。(仮想通貨のマイニングうんぬんのくだりではよく聞く話ですが、AIという文脈では初めて聞きました……)

本分で挙げられていた例が、人間の思考時の消費エネルギーが21ワットで話題のアルファ碁が2万5千ワットというものでした。まだまだエネルギー効率という点では人間に劣るといったところでしょうが、これに関しては別に人間と比較する意味はない気がしますがもしかしたらあるのかも。そのあたり勉強してみようと思います。

 

 〇AIが主観から逃れられない人間では見落としてしまうような情報も逃さず読み取り、冷静に判断できるというのは諸刃の剣だろうなと思います。

 確かにこのAIの特徴は大きな強みであると思う一方で、人間一人一人が異なる知識・経験・感性に基づいた異なる判断基準で判断していく人間の性質を持つことができず多様な最適解を生みえないという点では大きなAIの弱みでもあるのではないかなと考えます。

 

〇AIは本音と建前の判断やトレードオフが生じる中での意思決定が苦手ということであるから、当面何らかの交渉等でAIが表に出てくることは無さそうですね。交渉用のデータの分析等の裏方でAIに頑張ってもらって人間が表で交渉して結論を出していくことになるでしょう。

『本音と建て前というものが理解できないAIを京都に連れて行ったらどうなるか』という企画なりなんなりをやったらめちゃくちゃ面白そうだなと思った次第です。「娘さんのピアノお上手ですね」という言葉を言われて「ピアノの音がうるさいんだと暗に伝えているんだ」って思えるわけはないのでね。

 

〇「AIはデータから学ぶが人間は失敗から学ぶ」

合理性だったり前例だったりのないアイディア発想がまだまだ人間の特権というのは注目すべきところかなと思います。

 

〇「直感や大局観が重要とされる企業の経営判断はAIにとって最も困難な仕事の一つ」

しばしば、どの仕事がAIに代替されないかという話がされますがコンサルティングやマネジメントは人間がこれからもやっていくことになるでしょう。

 

〇「AIは固有の心や感性・価値観を持たないので人の心を動かすアートは生めない」

ゼロからイチを生み出せないというありがちな話ですが、大切なポイントです。

 

〇「AI・機械による効率性や利便性に人間が依存することで自分で考える力が低下することで、人間の強みであった思考力判断力が衰退しAIが人間を超えるという事態を招いてしまう」

これは皮肉な話ですが、このシナリオが現実のものとなる可能性は低くはないでしょう。常に、ツールとしてAIや機械と付き合う意識が必要となりそうです。ただ、この意識を強く持ちすぎるとせっかくAIに代替してもらえるようなところで代替が実現しないといった事態が起こりかねないのでそこら辺のバランス感覚が大切になっていきそうです。じっくり議論して行きたいところです。

 

〇BIは政治学では「生存権所得」と称され、その取得条件は「国民であること」。

 

〇本来生活保護を受けるべき人の8割(約800万人)が支給されておらず、逆に不正受給率は0.4%というのは個人的に衝撃でした。メディアで取り上げられるのは後者の不正受給の問題という話ばかりだったので。

 

〇トリクルダウン理論は富裕層の富が国内に再投資されることで成立する理論らしいが、BIみたいなある種強制的な再分配のシステムがない限り海外に資本が流れていくのは当然の帰結だと考えます。

 

〇「BIが導入されることで、国民生活の安心と安全を守るための手厚い福利厚生をはじめとしたコストを企業が削減できるようになり、自由で柔軟な経営戦略をとれるようになる」という考え方は結構企業でも好かれる気がするのでいい方向に向かう可能性が高いと思います。

まとめ

自分が注目した内容の一部しか話していないのですが長くなったのでここら辺で終わらせておきます。

たった250ページの内容ですが学ぶことは沢山あるので入門書として「AIとBIはいかに人間を変えるか」をぜひ読んでみることを強くお勧めします!

ではまた。